心・技・体の難しさ。

十五年前に娘の仕送りに支障を起こさない為にトライアスロンを止め、八年前に膝の将来を考えマラソンも止めましたので、趣味のスポーツは水泳と休日に妻とのパークゴルフだけになってしまいました。 

しかしどうせやるなら向上心を持って上達を目指す方が楽しいのですが、上達には一流選手が言うイメージトレーニングが必須で、頭で考えたイメージに体の動きをどれだけ近づけることができるか? の修正の連続です。 

ハードな練習は持久力に繋がっても、高齢者の上達には不向きです。 

根本的な運動能力は小脳の先天的能力が関係していますが、水泳の場合の早く泳ぐ要素は抵抗が少ない理想的な姿勢と理想的なタイミングを身に付ける事と筋力です。

高齢者の私は筋力に頼ると怪我や故障に繋がりますので、故障を防ぐ為の最低限の筋力トレイニングとストレッチを日課にしています。

高齢者に必須の筋力以外の姿勢とタイミングは練習に行く前に、模範的なフォームのネットビデオを何回も見て頭にイメージを焼き付けて出かけ、スタート時にいつも頭の中にある理想の姿勢とタイミングを意識して練習をし続け、徐々に距離を伸ばしながら体を修正し続けないと身に付きません。 

科学的に調査した結果でも、超一流選手は他の選手より脳の運動野以外の脳領域が活発に活動していることが判ってきています。 

つまり水泳をしていても体よりイメージの脳領域の方が活発になって練習していないと、自分の思った通りに体が動かすことが持続せず、楽に早く泳ぐことに繋がりません。

超一流選手がサッカーでシュートする時にゴールは見ていませんが、頭の中にはゴールへの映像が描かれているに似ています。

ゴルフのパットでも、頭の中でボールのスピードとカップに入るまでの流れがイメージできて打つ事が一番大切と思います。

一番大切な精神的な強さに繋がるものは脳領域をフル稼働して練習で身に付けた試行錯誤による確信が脳に刻まれていることが自信になって無心になれます。  

水泳の面白さはイメージに体の動きを近づける練習過程ですが、抵抗の少ない姿勢を維持して体幹の体重移動に合わせて手を掻くタイミングがピッタリ合うとひと掻きで進む距離が延び、手で掻く回数が減少し息が上がらずに楽に綺麗に泳げるようになります。

疲労物質の乳酸が出るとその姿勢とタイミングを維持できなくなるのは理想形が体に沁み込んでいないことと持久力の減退です。

心技体と良く言いますが、私のようにプールで泳ぎを覚えた者が海に出ると、不安でフォームもタイミングもまゝならず異常に疲れ、すぐに息が上がってしまうのは不安で心が乱れて体全体に余分な力が入っているからです。

体を鍛え・技を磨き・心にその努力の自信を携えて臨んでも、人は自己顕示欲や欲望や不安などで心は千々に乱れ失敗しますし、体力は年齢と共に落ちますのでスポーツの一流は長く続かないのも必然です。

年齢的にバタフライはあと五年位が限界で、平泳ぎも腰に負担がかかるので、いずれクロールだけになり最後は全てを失ってしまうのが人生なので常に今を楽しむのが大切と思っています。 

私の今の目標は隣のコースを泳ぐ酪農大学水泳部上級者と百m(今は50m)を同じ位のスピードで泳ぎ切りたいことです。

理想の泳ぎとクイックターンを修正し体に沁み込ませ続ければ、もしかしたら出来ない事でも出来るようになるのでは? と恋愛のように錯覚をしている時が人生で一番幸せな時と思いながら、老ぼれの見果てぬ夢を楽しむのも生きているからです。