トランプ大統領の登場の理由。

まず結論から言うと、先進国では中流が下流に落とされ異常に格差が拡大し続け、このままでは既存の政党や官僚機構のままでは変革が望めないことを民衆が肌で感じ、革命ができない文明社会の唯一の選択である投票行動で、追い詰められた人達がやけくそで破壊者を選択した結果では? と思います。

資本主義における合理主義が悪用され、世界の長者八人の資産合計と貧困者三十八億人の合計がほぼ同じという異常事態の格差進行がその証拠です。

第二次世界大戦の死者の大幅増加は近代兵器によるものですが、核兵器の今の時代の戦争は人類や国家の滅亡に繋がるように、国家内においても革命という血を流す時代でないほどに文明が進んでいる現代では投票による選択行動以外ありません。

古びた窮屈な社会の刷新は、文明が進んでいない時代には血を流す犠牲者を伴って、歴史的には参百年に一度位の割合で革命が起こっていました。

日本では明治維新が一番大きな革命でしたが、幕府側に勝海舟のような真の狂気への理解者がいなかったら無血開城の政権移譲はなかったと思います。

そしてこの維新という革命で初めて制度疲労している膿の溜った社会が破壊され、既存の権利者の利権が剥奪され、その後また第二次世界大戦の過ちを犯した混乱を繰り返しながら、敗戦による米国の占領政策という外圧によって民主主義へ移行し、少しづつですが公平な社会制度を作り上げ、発展し豊かになって来た日本も平和ボケと癒着の制度疲労です。

しかしもう先進国においては戦争や革命などによるリセットは無理な時代を迎えております。

麻雀のようなゲームにおいてもリセットが必要なように、社会制度にもリセットが必要で、今は選挙がその役目をしているのですが、これほど政治家と財界(お金持ちも含めて)と官僚による相互利益の癒着が進んだグローバル社会が続くと、クリントンでは民衆の格差への不満解消という革命は無理と判断し、それなら破壊者の方が自己利益として可能性があると短絡的に考えたのでは? と思います。

幼児と積木遊びをすると、出来上がった途端に幼児は壊しますが、創造とはその前に破壊が必要なものですが、知的な大人は折角作ったものへの破壊を恐れるプチブルですが、失う物がない無知な幼児は先を考えず、無意識ですが破壊する勇気があります。

今の格差は狂気で、その勝者の既得権益を享受している人達は自分達が正気と思っていますが、実は資本主義が民衆主義を食い物にしている狂気が実態であり、ヒトラー誕生時のドイツのように人間は追つめられると狂気を選択する傾向があるようです。

数の少ない資本家が狂気で収奪し、数の多い民衆が収奪(過重労働・昇給なし・派遣法)によって追いつめられ、正気から狂気の窮鼠猫を噛む状況まで来たことが、英国のEU離脱やトランプ大統領を生んだと考えることが自然なことです。

投票による選択が民主主義における平和的なリセットで、その時は混乱も当然伴います。

孤立主義の進行で恐慌や戦争の危機も考えられますが、格差に苦しむ民衆に残された唯一の手段です。

このような問題を避ける為には、日産のゴーン会長のような経営者だけが高額な所得を得ている法人には高い法人税率を課すように社会制度を整えると今のような格差は防げて、その分を社員に還元されるような仕組みにすれば、その所得が個人消費にまわり景気循環はもっと良くなっていたと思います。

私如きが気が付くことなので、知的な官僚なら気が付いていると思うのですが、やらないで派遣法を改正して派遣労働者を増やし格差を助長するのは財界や政界とグルになっているからだと思います。

小泉政権時に製造業にも派遣社員を認めた政策立案者の竹中平蔵氏は、今人材派遣会社最大手パソナの役員になっているのは偶然ではないと思います。

トランプ大統領はこんな癒着状況を打破する為の、幼児のような必要悪ではないか? と思います。

最近の東芝や少し前のシャープやもっと前のソニーなどが危機を迎えたのも、過重労働を課した社員から搾取し続け、内部留保を増やし株価を上げ経営者達は高額な給与や退職金やストックオプションを行使し、表面化しなければ後は知らない顔をして止めて行った問題先送りエゴ体質の必然と思います。

八年程前に九十二歳で亡くなった知的なおばちゃんは、満州から引上げ苦労したので戦争は絶対いけないと常々言っていたのですが、亡くなる少し前の帰りに突然振り返り『高野さん、今の社会を見ていると戦争は必要悪かも?』と悲しそうな顔で言いましたが、その時私はその方の政治的自覚の教養に胸が詰って返す言葉が見つかりませんでした。

電通の問題もそうですが、膿を出すためには犠牲者という貢物が必要なようですが、我が娘だったらと思うと誰もがゾッとする痛みを忘れています。

昔は高額所得者には累進課税が高く課せられ公平が保たれておりましたが、米国ではレーガン・日本では小泉政権の時に下げられ、その分広く一般への課税が強化されたことも格差拡大の遠因でしたが、どちらの政権も国民に人気があった矛盾があります。

景気を良くする為の個人消費を上げるには、一人の人間が五億の所得を得るより、千人の人に五十万円増額した所得配分が確実に消費拡大に繋がります

資本主義は究極の合理主義で成り立っているのですが、資本主義の中で資本家の少数の勝利者が、民主主義という政治形態の中で多数の民衆を合理主義で飲み込んでしまった結果の格差への不満が、トランプという破壊者を呼び込んだように思います。

政治家のレベルは選んだ国民のレベルに比例するのが民主主義の危うさですが、ヒトラーのような独裁者を生んだ過ちを犯し犠牲者を出しながら、反省し失敗から学びながら少しづつですが進歩します。

いずれポピュリズムで権力を握った人達や搾取でお金持ちになった人達は、カチカチ山のタヌキのように権力やお金という泥舟と一緒にヒトラーのように沈んで行くのだと私は思っています。