広くなければ、深まりも高まりもしない。

現代は実学重視で英語やパソコンや一芸に秀でる事を優先していますが、偏った学習だけではその人の人生は豊かにならない事を忘れています。 

娘が中学の時『何の役に立つのか判らない、美術や技術家庭や体育をなぜ勉強するのか』と聞かれ『広い太平洋に日本海溝という一万mの深さを習ったでしょう、狭い場所で同じ深さを掘る困難に似て、何事も広くなければ深まったり高まったりしないのです。義務教育で広く浅く勉強する事が後の人生を高めることに繋がるから』と話しました。 

その時に一例で説明したのは野球で野村元監督が現役時代にデーター野球という数学的思考を取り入れて戦ったことが、不足を補いプロで生き残ることに繋がった。

オリンピックでも決勝に進む選手の身体能力はそんなに違いはないけれど、身体能力とは無縁の思考回路を使う人がメダルを取っていると思うと話しました。 

今は広く浅く基礎学力を身に付けて引き出しを沢山持つ事が、あなたの長い人生の中で不足を補うものとして必ず役立ちます。 

そして義務教育後は身に付けた嫌いなものを一度捨て、好きなものに特化した時に高めたり深めたりするために捨てたものが役に立つ時が必ずやって来ますと話しました。 

高校二年の終わりに『数学を捨てる』と言ったので『どうぞ、ちゃんと五の評定を取っているのだから必要な時には使えるよ』と答えました。

大学に行く時には、未来や社会を読み取るために心理学や経済学や社会学なども勉強し、政治的基礎知識なども考慮して総合的に社会を眺め、自分自身の未来を豊かにするように創造する糧にして下さいとお願いしました。

未来を予測する材料は、過去の歴史と現在の状況(人口動態・経済状況・政治状況・大衆心理・食料・エネルギー)を勘案して判断する以外に手だてはなく、企業でも個人でもこれらの予測を誤ると破綻に繋がっています。

お金は目的にするには儚すぎますので、大切な手段と自覚して自分自身を試すつもりで人生を過ごす方が愉しめます。 

人は一芸に秀でてもクイズ王のように広く浅く知識を持っても、収入には繋がっても自分自身が高まっているという実感なしに心は豊かにならないもので、学問だけでなく趣味やスポーツなど多くの広がりを持つ事が人生を豊かにしてくれます。 

大学入試の時には健康管理も才能のうちで、スポーツでも入試でも風邪をひいたからの言い訳は敗因として聞き入れられない! と念を押しました。 

最優先すべきは健康と広がりのバランスで、バランスの取れた広がりは人間が一番必要とする人間関係の広がりにもなり、その人の人生を豊かにして行く事に繋がっています。

誰でも健康であればいくつからでも学習し広げていくことで、死の一歩手前まで人生を豊かにすることができると思います。