神様への手紙。

先日四年程前にご主人を亡くした方が『最近、子供時代のような寂しさに襲われることが有る』と言いました。 

咄嗟に頭に浮かんだ思いを言葉に出来ず黙って見送りました。 

詩人・谷川俊太郎さんが翻訳した『神様への手紙』のあとがきに書いていたもので、世界の子供達が神様に宛てて書いた手紙の本です。   

谷川さんのあとがきには『人間の様々な経験の中でも、無邪気さと子供時代の驚きに対する郷愁ほど長続きするものは有りません。 子供の頃の世界は今よりずっと単純だったと振り返りたがるものですが、私達はそう考えたいだけなのです。 大人というものは自分でそう思っている以上に、自分の中の子供の部分に頼っているのではないか。 私達の感ずる喜びも不安も、それが深ければ深いほど、子供の心に近づくのではないかと思います。 大人になると言うことは、自分の中の子供を捨て去ることではなく、むしろそれを突き詰めて行くことではないか、子供達の手紙を記録しながら、私はそう考えました』と書いていました。 

私には『子供をしっかりやりなさい、子供をしっかりやった人が本当の大人になれる』と言っているように思いました。  

最近の困った傾向に、妙に大人ぶった子供と、子供染みた大人が増えたように感じますが、これも子供をしっかりやっていなかった結果では? と思い到ります。 

この方は三年ほど鬱病に苦しんでいましたが、この日は表情も良く感情も顔に表れていたので、子供時代のような寂しさを実感し子供の心に近づいたので『治癒が近いですよ』と後姿に、心の中で声をかけました。