人としての最強のもの。

この歳まで生きて『人間の幸せと強さの源泉は何か』が沢山のお客様に接してきて見えてきたような気がします。 

人生で出会う困難や悲しみを受け止め乗り越える時に、真っ直ぐに進む勇気は実は親から愛されて育つ中で獲得しているように思います。 

何かに秀でていることが無くても、親からの無上の愛を浴びて育つ中で僻みや妬みの感情が少なくなり、人との相対評価で自分の幸福度を測ったりしない人間に育つ事が、人としての最大の財産になっている気がします。 

逆に親から『あなたの為』という真綿で首を絞められるように印籠をかざされ、何かが出来ないと評価されない育ち方をすると、ありのままの自分でいる事への恐れが、文化として身に付いてしまう危険が有ります。 

現代社会は、そんな育ち方をした人が増えたような悲しさを感じます。 

しかし、中には社会に出てから広い視野で自分が学べる人との出会いを大切にし、葛藤を繰り返し親の倒錯したアダルトチルドレン的支配を乗り越え、理解し許す大きさを身に付け連鎖を断ち切った人もいますが、そんな人はごく少数です。

他の動物と違い、人間だけは長い親への依存の期間を経て自立する動物なので、子供は無意識に親の欲望を取り込み好かれようとして、狭い視野の家庭の文化が沁み込んでしまいがちです。  

誰でも認められる喜びで伸びて行くものですが、勉強や運動が出来なくても『私は愛され・認められている』と実感して育つ事が、人間が本体的に持っている生きる力を育むと思います。 

学問は人生の曲がり角を利害に惑わされずに選択する論理回路を作る為のもので、親の庇護のうちに子供に多くの失敗からの教訓を経験させる勇気が欠けていた結果が、今の社会状況です。 

妻の価値を夫が上げ、家族を支える夫の価値を妻が上げている家庭で育った子供は、そのままの自分を親が愛し認めてくれる環境の中で、ごく自然に生きる力が育って行くと思います。 

そんな素敵なお客様が来店すると、本当に楽しい気持ちになり教えられて、『人として最強なものを持っている』と思いながら見送っています。